コラム

2024.04.26
発達障害について

自閉症スペクトラムの子どもがおもちゃを並べる遊びの意味は?

自閉症スペクトラム(ASD)のある子どもたちが示す独特の行動の一つに、「おもちゃを並べる」遊びがあります。
この行動はしばしば繰り返され、外から見ると単調な活動に見えるかもしれませんが、これにはその子なりの深い意味と目的が存在します。
今回は、この行動が自閉症の子どもたちにとってどのような意味を持つのか、またそれをどのように理解し支援していくべきかを掘り下げます。

【おもちゃを並べる行動の背景】

自閉症スペクトラムの子どもたちは、しばしば特定のパターンやルーティンに強く引きつけられます。
おもちゃを一列に並べる行動は、この傾向の一例です。
この行動により、彼らは周囲のカオスを整理し、自分自身を落ち着かせることができます。
おもちゃを一定の順序やパターンで配置することで、予測可能で整理された環境を自ら作り出しているのです。

【行動の心理的意味】

・コントロールの感覚
自閉症スペクトラムの子どもたちはしばしば、外の世界が予測不可能で圧倒的に感じるため、おもちゃを並べることで自分自身に安定を与え、コントロールしている感覚を得ています。

・感覚的満足
特定の感覚的入力(視覚的パターン、物理的な触感など)を通じて、感覚的な満足や安心感を得ることも、この行動の一因です。

・自己表現の手段
言語や社会的スキルが限られる中で、おもちゃを使った表現は子どもにとって有効な自己表現の方法ともなり得ます。

【どのように対応したらよいか】

・理解を深める
この行動が自閉症スペクトラムの子どもにとってどのような意味を持つのか、その行動の意図を理解することから始めます。

・十分なスペースの提供
次に、おもちゃを並べる行動が安全におこなえるよう、十分なスペースを提供します。
これにより、子どもは自由に探索や表現をできるようになります。

・学びを見守る
おもちゃを並べる行動は、自閉症スペクトラムの子どもたちにとって重要な学習ツールでもあります。
この行動を通じて、彼らは色、形、サイズといった属性を識別し、分類するスキルを獲得することができます。

・肯定的にサポートする
子どもが何を感じているのかを観察し、ポジティブな声掛けをおこなうことで、更なるスキルの発達を助けます。

【家庭でできる工夫】

ご家庭でのサポートにおいては、この行動を理解し、肯定的に受け止めることが重要です。
また、親が子どもの遊びに積極的に参加し、それを共有する時間を持つことで、親子の絆を深めることができます。
さらに、新しい並べ方を提案してみることで、子どもの創造性を刺激したり、新しい学習機会を提供することにもつながります。

まとめ

自閉症スペクトラムの子どもたちは、しばしば感覚処理のちがいを持ち、周囲の世界を多くの人とは異なる方法で経験します。
このため、彼らにとって物を並べることが、外部環境の混乱を整理し、予測可能な秩序を作り出す手段となるのです。

この行動は、安心感を得る方法であり、学習の機会でもあり、コミュニケーション手段でもあります。
そのことを理解しサポートすることで、子どもたちは自己表現の幅を広げ、より豊かな関係を築くことが可能になるでしょう。

監修:
発達支援スクール コペルプラス
代表講師 有元真紀

幼児教室コペルの講師時代から、のべ1万人以上の子どもたちの指導に携わる。
また近年は指導員の育成にも力を入れている。

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