コラム

2024.04.18
発達障害について

ASDの子どもの勝ちや一番へのこだわりの強さにどう対応する?

自閉症スペクトラム(以下:ASD)を持つ子どもたちは、多くの場合、独自の世界観と感情の表現を持っています。
中には、「勝つこと」や「一番であること」への強いこだわりを示す子どもも少なくありません。
これは時に、園生活や学校生活において課題となることがあります。

しかし、この強い意志を理解し、適切にサポートすることで、子どもたちの成長につながる大きなチャンスにもなり得ます。
そこで今回は、ASDのある子どもの一番へのこだわりにどう対応すべきかを考えてみましょう。

1. 理解から始める

まず大切なのは、勝ちたがる気持ちや一番であることへの強いこだわりが、必ずしも負の感情ではないということを理解することです。
この強い動機づけは、自己肯定感の源泉であり、目標達成に向けた大きな原動力となり得ます。
子どもたちが何に価値を見出し、何に情熱を感じているのかを理解することから始めてみましょう。

2. ポジティブな方向への誘導

次に、子どもが「一番」を目指す気持ちを、ポジティブな方向へと導いていきます。
例えば、他人との競争ではなく、自己の成長や達成に焦点を当てるように促すことが考えられます。
「今日できたことを明日はもっと上手にできるかな?」といった自己超越の目標設定は、子どもたちの意欲を健全な方向へと向けるのに役立ちます。
他にも、順位ではなく「ゴールできたことがすごいんだよ」「頑張った人はみんな勝ちなんだよ」と、結果よりも過程に注目することも有効です。

3. 適切なフィードバックの提供

勝ち負けにこだわる子どもたちにとって、失敗や負けは大きなストレスとなることがあります。
こうした状況に対しては、経験の一部として捉え、次に生かすための学びとすることが大切です。
「次はどうしたら勝てるか考えてみようか」といったフォローを通じて、子どもたちが負けた経験からポジティブな教訓を引き出せるようサポートしましょう。
また、「悔しかったね。誰かが勝つということは、負ける人も必ずいるんだよね」と全体を俯瞰して見られる声掛けや、「○○が一番だった時、二番や三番になった子もいたね。今日は一番で嬉しかったかもしれないね」など、他者にも目を向けられる声掛けもおすすめです。

4. 協力と共感の育成

「一番であること」への強いこだわりは、協力や共感といった社会的スキルの育成においても一定の障壁となり得ます。
このため、少グループでの活動を通じて、他者との協力の大切さや、異なる意見を受け入れる柔軟性を身に付けさせることが有効です。
友達や仲間と一緒に目標を達成する喜びを経験することで、競争ではなく共有する価値を学べます。
6名以下の小集団でおこなうコペルプラスのソーシャルレッスンも、ぜひご活用ください。

5. 家族との連携

家庭内でのサポート体制をもまた、非常に重要です。
他者への関心が薄く、一人で過ごすことが多い子の場合、そもそも競争や勝負をする経験が少なく、勝ったり負けたりすることに慣れていないケースがあります。
この場合、子どもは悔しい気持ちの処理の仕方を学んでおらず、泣いたり暴れたりする形でしか、自分の気持ちを表せないのかもしれません。
そこで、安心できる家庭という環境で、勝ち負けを繰り返し経験しておくことがおすすめです。
シンプルなゲームをまずは親子で楽しみ、慣れてきたら人数を増やしてみましょう。

まとめ

ASDの子どもたちが「勝つこと」「一番であること」に強くこだわるのは、その子なりの世界を生き抜くための戦略であり、また、自己実現のための強い動機づけです。
この情熱を理解し、適切にサポートすることで、子どもの成長につながる大きな可能性を引き出すことができます。
子どもたちが自分自身と向き合い、自己超越を目指す過程で、私たちもまた多くを学び、共に成長していければと思っています。

監修:
発達支援スクール コペルプラス
代表講師 有元真紀

幼児教室コペルの講師時代から、のべ1万人以上の子どもたちの指導に携わる。
また近年は指導員の育成にも力を入れている。

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