2024.10.07
ビジョントレーニングとは?「見る力」と学習障害(LD)の関わり
子どもたちの学習能力にはさまざまな要素が関わっており、その一つが「見る力(視覚機能)」です。
私たちは日常的に視覚情報を多く取り入れていますが、子どもたちの中にはこの視覚機能に何らかの問題があり、それが学習に大きな影響を与えている場合があります。
そのような視覚の問題を改善するためのアプローチが「ビジョントレーニング」です。
今回は、このビジョントレーニングが学習障害(LD)とどのように関わるのかについて解説します。
【ビジョントレーニングとは】
ビジョントレーニングとは、視覚機能を高めるためのトレーニング方法です。目で「見る」だけでなく、視覚情報を脳がどのように処理し、それを基にどう行動するかという一連の流れに着目します。
目そのものの健康状態(視力など)とは異なり、ビジョントレーニングでは視覚の「使い方」を改善し、視覚認知能力や空間認識能力を向上させることを目的としています。
例えば、文字を見て読み取るとき、目はその形や位置、空間的な配置を把握し、脳に情報を送ります。
視覚情報を正しく処理できないと、文字がぼやけて見えたり、行が飛んでしまったり、理解に時間がかかったりすることがあります。
このような視覚機能の問題を訓練することで改善し、スムーズな学習をサポートするのがビジョントレーニングです。
【見る力と学習障害の関係】
学習障害(限局性学習症、LD)は、知的な発達には問題がないものの、読み書きや計算など特定の学習領域で困難を感じる障害です。この学習障害の中には、視覚機能の問題が関連している場合が多くあります。
例えば、次のような症状が見られることがあります。
・読むのが苦手
文字がダブって見えたり、行が飛んでしまうことがあるため、文章をスムーズに読むことができません。
結果として、読むスピードが遅くなり、内容の理解にも時間がかかります。
・書くのが苦手
見ている文字や図形の形を正確に捉えられないため、書き写す作業が難しくなります。
文字を鏡のように反転させて書いたり、行間がずれたりすることもあります。
・計算が苦手
数字の形や並びを正確に認識できないことで、計算の途中で桁を間違えたり、答えを書き間違えたりすることがあります。
これらの問題は、知識や知的能力とは別に、視覚機能が原因となっていることもあります。
このため、学習に困難を抱える子どもの中には、視覚機能の評価や改善が必要なケースが多いのです。
【ビジョントレーニングで改善できること】
ビジョントレーニングでは、具体的な視覚機能を向上させるためのエクササイズをおこないます。このトレーニングは、目の筋肉を強化するものや、視覚と脳の連携をスムーズにするものなど、多岐にわたります。
主な改善できる視覚機能には、次のようなものがあります。
・眼球運動の改善
文字や物体を目で追いかける力を高めることができます。
例えば、読書の際に行が飛ばないように目を動かすトレーニングをおこないます。
・視覚の集中力向上
一点を長く見つめる力を強化することで、文字や図形を正確に認識し続ける力を鍛えます。
・空間認識力の向上
物の位置や距離感を正しく把握する力を高めます。
これにより、図形の書き取りや、数式の理解がしやすくなります。
こういったトレーニングを通じて、視覚情報を正確に処理できるようになると、読み書きや計算のスムーズさが向上することが期待されます。
【ビジョントレーニングの効果と限界】
ビジョントレーニングは、視覚機能に課題を抱える子どもに対して大きな助けとなる可能性がありますが、万能ではありません。学習障害(LD)の原因は視覚機能だけではなく、脳の働きや他の発達的要素も影響しているため、全ての困難がビジョントレーニングで解決できるわけではありません。
ビジョントレーニングが効果を発揮するためには、まず視覚機能に問題があるかどうかを正確に診断する必要があります。
そのためには、専門の視覚機能検査を受けることが必要です。
視覚に問題があると判明した場合は、ビジョントレーニングを取り入れることで、学習の苦手部分が改善される可能性が高まります。
ただし、ビジョントレーニングだけに頼るのではなく、他のアプローチと組み合わせておこなうことが重要です。
例えば、学習支援のプログラムや特別な教材の利用、家庭や学校でのサポート体制の強化などが効果的です。
【子どもを支えるための総合的なアプローチ】
ビジョントレーニングは、学習障害に悩む子どもに対する一つの有効なアプローチですが、学習障害の本質的な問題に取り組むには、総合的なサポートが必要です。特に、学習の遅れや困難が視覚機能以外の要因から来ている場合には、専門家の指導や治療が必要になります。
ご家族や先生、専門家が連携して、子どもが持つ得意分野を活かしつつ、苦手な部分を支援する体制を整えることが大切です。
ビジョントレーニングを取り入れつつ、学習環境の工夫や適切な教材を利用して、子どもが自信を持って学習に取り組めるようにしましょう。
まとめ
「見る力」である視覚機能は、学習の基礎を支える重要な要素です。ビジョントレーニングを通じて視覚機能を改善することで、学習障害を抱える子どもたちがよりスムーズに学びを進めるサポートができるかもしれません。
ビジョントレーニングは、視覚機能を高めることで視覚的な困難を軽減するための方法で、特に学習障害(LD)の子どもに対して、読み書きや計算といった学習面での自信を取り戻す手助けとなり得ます。
ただし、視覚機能以外の要因にも目を向け、総合的なアプローチを通じて子どもたちの成長を支えていくことが重要です。
次回のコラムでは、家庭でできるビジョントレーニングの実践法についてご紹介します。

監修:
発達支援スクール コペルプラス
代表講師 有元真紀
幼児教室コペルの講師時代から、のべ1万人以上の子どもたちの指導に携わる。
また近年は指導員の育成にも力を入れている。
