なにが『正しい選択』?
我が家には、素直で明るくちょっぴり頑固な(そこもかわいい)自閉スペクトラム症の娘、ゆず(5歳、年長)がいます。
ゆずは1歳半健診の時に発語がなく、目も合いにくいことから、小児発達専門病院を紹介されました。
(小児発達専門病院の予約は半年待ち。その間、何か出来ることはないかと市の保健師さんや、母子健康センターの保育士さんの育児相談に赴き、お話を聞きましたが「お母さんがしっかり話しかけてあげてくださいね」と言われ、まるで私が子供ときちんと接していない、向き合っていないと責められているような気持ちになるだけ。不安は増すばかりでした。)
小児発達専門病院を受診してからは、2回/月で作業療法を開始。
(主治医から『視覚優位であること』、『相手の表情を読むことが難しいこと』を教えていただいたため、浴室にあいうえお表を張り、[「これなーんだ?」「○○」「せーかい」→ハイタッチ(動作)] と、クイズ形式で指差しと単語、あいうえおを教えました。いつも決まったフレーズと動作で褒めることでコミュニケーションをルーティン化したのがよかったのか、最初のうちはポカンとしていたゆずが、徐々にニコニコでハイタッチをするようになり、みるみる単語を覚え、2歳半ごろには動物、果物、野菜、色などの単語を理解するようになりました。)
言葉が出始めた2歳半ごろからは2回/月で言語療法を開始して、3歳で幼稚園に入園するころには、「ナイナイして」「ゴミバコポイして」などの簡単な指示は理解できるようになりましたが、言葉の理解に伴って自我が芽生えてきたため、自分の思い通りにならないとかんしゃくを起こすようにもなりました。
入園後は保育所訪問支援事業を利用しながら、加配で一対一でご指導いただき、少しずつ園での生活に慣れ、徐々にかんしゃくもなくなっていきました。
今では園での生活はほぼひとりでできるようになりましたが、やはりいつもと違うことには不安を感じやすく、言葉もあいかわらず不自由で、単語はたくさん知っているのですが、文章を組み立てることが難しい様です。
幼稚園では友達づきあいができず今でも一人で遊んでいることが多く、また感覚過敏で大きな音や強い光は苦手ですし、間違えることや出来ないことには過剰に反応しやすい、いわゆる自閉的傾向は今も健在です。
そんなゆずが年長さんになる直前の3月。療育の待合室で、私に「あの子のおなまえはなに?」と聞いてきました。
見るとそこには、ゆずと同じ年頃の女の子とお母さんが座っていました。
それまで、お友達に興味を示さず一人の世界で楽しんでいたゆずだったので、他人に興味を示したことに少し驚きつつ、私が「聞いてみたら?」と伝えると、ゆずはトコトコ歩み寄り、「この子のおなまえは?」と聞いたのです、、、お母さんに。
思えば、ゆずの周りはいつでも大人ばかりでした。
作業療法や言語療法も先生と一対一、幼稚園でもゆずの傍にはいつも加配の先生が付いていてくれます。
園児さんはたくさんいますが、もともと一人遊びを好む傾向がありますし、言葉が不自由なゆずと一緒に遊んでくれるお友達はなかなかいません。
またコロナ過という情勢も、ゆずから同世代の子供たちと集う機会を奪う結果となってしまいました。
彼女にとって、同世代の子供に声をかけることよりも大人に声をかけることのほうが、ハードルが低かったのも仕方がないことなのかもしれません。
就学に向けて、新たな目標を見出す出来事でした。
春休みがあけた4月、幼稚園の先生から公立小学校での『言葉の教室』を紹介されました。
就学を見据え、学校という場所に慣れる意味でも娘にとってよい経験になるのではないかと考えて下さったようです。
『言葉の教室』は先生と一対一なので、私の希望とはやや異なっていましたが、せっかくのご好意です。
見学だけでも行ってみようと考え、すぐに予約の電話をしました。
言葉の教室は週に1回1時間。未就学児を対象に、発音が苦手、自分の思いを表しにくい、おうむ返しをする、言葉が詰まって話しにくいなど、言葉の発達や発音に心配のある子供の支援をしている教室で、公立小学校と同じ敷地内にあります。
母子分離タイプで、指導の間は親は別室(窓ガラス越しに中の様子が見えるが相手からも見えてしまうのであまり覗き込めない)で待機しています。
(※ここからはあくまで私が受けた印象です。すべての『言葉の教室』を否定するものではありません。)
『言葉の教室』の見学をして。
まず結論から言うと『言葉の教室』は娘には合っていませんでした。
(その理由は下記に列挙します。)
『言葉の教室』は
・療育ではなく、訓練である
(最初の面談で「しっかり訓練していきますから」と言う→私が望んでいるのは娘の『訓練』ではありません)
(『子供にトランポリンをさせて、笛の音で印のところまで戻る』を繰り返す→まるで犬や猫の調教の様でした)
・娘の話を聴いていない(『聞く』ではなく)
(先生の「お昼何食べたの?」に対し「パン食べた」と答えた娘に、「パン食べたの!?ほんとに!?」と疑う→この日は平日でしたが午前中療育でその後昼一番で言葉の教室だったので幼稚園はお休みし車中で一緒にチョコデニッシュを食べました。)
・高圧的で口調が強い(この先生だけかもしれませんが…)
(娘が拙い言葉で一生懸命伝えようとするのに、「ええ!?」と強い口調で聞き返す→娘が萎縮して段々話したくなくなる様子が見て取れました)
・娘の気持ちに寄り添っていない
(先生の対応、態度、受け答えに傷ついていることに全く気が付いていない→表情が段々と曇り、「もうやめてあげて」と飛び出していきそうになるほどでした)
・できないことばかり見て、できることを見てくれない
(娘の前で「そんなことができない子ははじめてです」と言う→娘はしゃべれませんが聞き取りはできますので理解していますショックだったと思います)
・否定的な言葉を簡単に口にする
(質問に対して一生懸命答えた娘に「違うよ」と即効で否定する→自分の言葉で答えたことをまずほめてあげてほしいと思いました)
『言葉の教室』には「いきたくない」と言う娘を前に、こんなにつらい思いをさせてまで続ける意味があるのだろうかと言う想いと、逃げ癖を付けたくないと言う想いとが私の中に混在し、続けるべきか、辞めさせるべきか、正直とても悩みました。ゆずにとってなにが『正しい選択』なのでしょうか。
そんな時、たまたま小児発達専門病院で知り合ったお母さんと街でばったりと遭遇し、事の本末を相談したところ、コペルという療育スクールが近くにあると教えてもらいました。その方自身はコペルを利用したことはないとのことで、詳しいことは全くわからなかったため、私はわらにもすがる思いで、すぐに資料請求と見学、体験を申し込みました。
(コペルの体験を通して私が感じたことは下記に列挙します。)
コペルでは
・先生がとにかく優しく穏やか
(笑顔で出迎えてくださり、話し方がやさしく丁寧で、娘にもわかりやすく伝えてくれる)
・娘の話をじっくり聴いてくれる
(娘の言葉をさえぎることなく、途中で言葉が詰まってしまっても笑顔のまま待ってくれる)
・娘の話を絶対に否定しない
(娘の脈絡のない話も途中でとめたり否定することなく最後まで聴いてくれる)
・娘の気持ちに寄り添ってくれる
(娘の表情の機微を見逃さず、安心させる言葉がけをしてくれる)
・娘の得意なところに注目して、ほめてくれる
(できないことをできるようにする『訓練』ではなく、いいところを伸ばす『療育』をしてくれる)
・小集団での療育もあり、子供同士のかかわり方をフォローしてくれる
(娘の苦手な同世代同士でのコミュニケーションを培うレッスンができる)
体験を終えて帰るときのゆずの顔が、『言葉の教室』の後の顔とは全く違い、ニコニコのルンルン♪でした。
初対面の娘にも、愛情をもって接してくださっているのが、見ている私にもひしひしと伝わってきました。
私は迷うことなく、『言葉の教室』は辞めコペルを続けることに決めました。
コミュニケーション能力が乏しく他人に興味がないことから、自分からあまり話しかけたりしないゆず。
コペルに通い始めたころはただ先生からの質問に答えるだけだったのが、次第に先生に「あなたのおなまえは?」と自分から尋ねるようになりました。レッスンの度に先生に名前を聞くのですが、先生はいやな顔ひとつせずに笑顔で毎回名前を教えてくださいました。
あせらずじっくりと、ゆずのペースにあわせて、ゆっくりと娘との信頼関係を築いてくださり、娘も毎回楽しくレッスンを終えることができます。
3ヶ月かけて先生のお名前と顔を覚えたゆずは、最近では自分から先生に「まえがみきったの!」とか「(幼稚園の劇で)おほしさまやるの!」と話しかける姿も見られはじめました。
また他人と目が合いにくいゆずは、最初のうちは全くと言ってといほど先生と目を合わせることはありませんでした。しかし信頼関係ができてくると、次第にコペルの先生と自然に自分から目を合わせ、時に笑い合うこともできるようになりました。(先生から「目を見て」と指示したことは一度もなかったのに)
幼稚園の加配の先生からも「今日は絵本の読み聞かせのときにないてしまったんですが、「おばけがこわかったの」と、何がいやだったのかをきちんと自分の言葉で教えてくれました。成長しましたね」と言っていただきました。
コペルに通うことで、ゆずのコミュニケーションの幅が広がるだけでなく、リンクカードが25枚覚えられるという、今まで知らなかった娘の特技にも気づかせていただきました。
負けるのが大嫌いなゆずは、集団レッスンの際お友だちにゲームやじゃんけんで負けてしまう度にパニックを起こして泣き崩れていましたが、先生が繰り返し「勝っても負けても大丈夫」と伝え、負けてもゆずの希望にできる限り添うよう臨機応変に対応してくださることで、今では泣き崩れることなく、気持ちの切り替えが以前より上手くできるようになって来ました。
そして昨日はなんと、幼稚園でお友だちの輪に自ら入っていき、場の雰囲気を一緒に共有し笑い合ったり(お友だちと会話はまだ難しいようですが)、年少の女の子さよちゃんと手を繋いで園庭をお散歩して遊んでいたとのことでした!
今まで娘のそんな姿を見たことは一度もありません!
コペルでの集団療育で同世代のお友だちとの関わりに少し自信が持ち始めたのでしょう。些細な変化ではありますが、娘にとっては大きな進歩です。
定型発達の子供と比べると、ゆずの成長は本当にすごくゆっくりなんだと思います。
それでも、いえそれゆえに、私は成長の一つ一つを噛み締めながら、楽しく日々を過ごすことができます。
これからも、ゆずが成長し続けるかぎりなにが『正しい選択』なのか、悩むこともあると思いますが、その時々でゆずの気持ちを一番大切にして進むべき道を選んでいけば、きっと後悔することはないと信じています。
コペルのおかげで、優しい先生方、集団療育に通う同じ悩みを抱えるお母さん方やお子さん方、たくさんの方と出会う機会もいただきました。
わが子のように愛し、ゆずの将来を一緒に考えてくださるコペルの先生方には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
コペルを始めて本当に良かったと思います。
これからも親子共々、どうぞよろしくお願いいたします。
