2024.06.03
幼児期の発達
子どもたちに届く言葉のかけ方 ~優しさと共感を伝えるために~
前回のコラムでは、相手の心の状態を理解し、その視点に立って考える能力「心の理論」について解説しました。
今回は、心の理論がまだ育っていない幼児や、心の理論の獲得が遅れると言われている自閉症スペクトラム(ASD)の子どもたちにも伝わりやすい言葉のかけ方についてご紹介します。
【抽象的な言葉の難しさ】
「自分がされて嫌なことは相手にもしない」「お友達の気持ちになって」といった言葉は、子どもにとっては抽象的で理解しにくいことがあります。特に幼児期の子どもたちは、抽象的な概念を理解する能力が十分に発達していないため、具体的な例や状況を示すことが重要です。
【子どもが理解しやすい対応は?】
①具体的な言葉抽象的な概念は、特に幼い子どもにとって理解しにくいことが多いです。
「自分がされて嫌なことは相手にもしない」という言葉は、具体性に欠けるため、子どもが実際の行動に結びつけるのが難しいのです。
具体的な行動や状況に基づいて説明することで、子どもは理解しやすくなります。
例:「お友達を叩くと痛いよね。だから叩かないでね」
②感情の説明
子どもたちが他者の感情を理解するためには、具体的な状況と感情の結びつきを示すことが効果的です。
そのために、具体的な状況を示し、その状況でどのように感じるかを説明します。
例:「おもちゃを取られたら悲しくなるよね。だから、お友達のおもちゃを勝手に取らないようにしよう」
③モデルを示す
親や教育者自身がモデルとなり、優しさや共感を実際に示すことで、子どもはその行動を真似しやすくなります。
例:「ママがあなたにお菓子をあげたように、お友達にも分けてあげようか」
【効果的な言葉のかけ方】
〈肯定的な言葉を使う〉子どもの良い行動を見つけ、それを積極的にほめることで、ポジティブな行動を強化します。
否定的な言葉よりも、肯定的な言葉の方が行動を促進する力が強いです。
例:「お友達におもちゃを貸してあげられたね。すごく優しいね!」
〈質問形式で考えさせる〉
子ども自身に考えさせる質問をすることで、自分の行動が他者にどのような影響を与えるかを理解する手助けをします。
例:「もしあなたがそのおもちゃを使いたかったら、どう感じるかな?お友達は今そのおもちゃを使いたいみたいだよ」
〈具体的な代替行動を教える〉
子どもにただ「ダメ」と言うのではなく、具体的にどのように行動すれば良いかを教えます。
例:「お友達が使っているおもちゃをほしいときは、『かして』って聞いてみよう」
〈共感を示す〉
子どもの感情に共感し、理解を示すことで、子どもも他者の感情に対して共感しやすくなります。
例:「今は一人で遊びたいんだね。そういう時もあるよね。お友達にもそういう時があるんだよ」
【子どもとの信頼関係を築くために】
日常的にたくさん会話をして、子どもの意見や感情を尊重することで、信頼関係を築いていくことができます。子どもには子どもの考えがあることを理解し、共感を示すことが重要です。
また、子どもが自分の感情を理解し、表現できるようになることは、他者の感情を理解するための第一歩となります。
「今、悲しい気持ちなんだね。その気持ちを教えてくれてありがとう」など、感情について言及し、言葉にする練習を取り入れていきましょう。
まとめ
「自分がされて嫌なことは相手にもしない」「お友達の気持ちになって」といった言葉は、子どもに伝わっていないことがあります。子どもたちに本当に伝わる言葉をかけるためには、具体的で肯定的な表現を使い、共感と理解を促すことが大切です。
周りの大人が日常的に具体的な行動や感情を示し、子どもと対話を重ねることで、優しさや共感を持つ子どもに成長していくことでしょう。

監修:
発達支援スクール コペルプラス
代表講師 有元真紀
幼児教室コペルの講師時代から、のべ1万人以上の子どもたちの指導に携わる。
また近年は指導員の育成にも力を入れている。
